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平均を超える株主資本利益率を示している企業は、特定できる資産の合計を大きく超える価値を持つ。
たとえば、一九七二年にB社がS社を二五OO万ドルで買収したとき、S社の資産は八OO万ドルと特定された。
借入金はゼロで、年聞の税引利益は二OO万ドル、株主資本利益率は二五%だった。
S社の工場、設備、在庫等は、これだけの利益を生むほどの市場価値を持つものではない。
それよりもむしろ、すばらしいキャンディーと、よいサービスを提供するという同社の評判に価値がある。
だから、生産コストをはるかに上回る水準で、製品の価格設定ができる。
これが、経済的グのれん。
の実態である。
その評判が定着している限り、高い利益率を維持できる。
あるいは、さらに伸ばすことも可能だろう。
経済的のれんは、平均を超える株主資本利益率をもたらすだけでなく、その価値は、インフレによって増大する可能性がある。
この点は、Pの株式投資戦略を理解するうえで基本になるものである。
説明のために、仮想の企業であるビーズ社を例にする。
S社は八OO万ドルの資産で二OO万ドルの利益を上げていた。
ここで、B社は同じ二OO万ドルの利益を生むのに一八OO万ドルの資産を必要とする平均的な企業である。
ビーズ杜の株主資本利益率は二%。
ほとんど、のれんはない。
同社の企業としての価値はたぶん一八OO万ドルであり、それで売買されるだろう。
平均的な利益しか稼ぎ出さないからだ。
平均を超える利益率を示すS杜のケースでは、Pは二五OO万ドルを支払っている。
両社の利益は同額、S杜の資産はB杜の半分以下。
しかし、B社より七OO万ドルも高い買値である。
「われわれがインフレ傾向の続くこの世界にいる限り、この取引は正当なものと考えてよい」とPは言っている。
この両社にインフレが与える影響を見るために、インフレによってコストが二倍になると想定する。
収益を同じ水準に保つためには、両社とも、利益を四OO万ドルに増やさなければならない。
これは販売価格を二倍にすることで達成される。
この両社の決定的な違いは、インフレが資産に及ぼす影響である。
インフレで、価格を上げることができたが、それには追加の資本支出が必要になる。
仮りに売上げが倍増すると、在庫投資を相応に増やさなければならない。
固定資産の場合、反応は遅れるが、結局、工場、設備、機械等は以前より高値で更新することになる。
S杜では、利益を二OO万ドルから四OO万ドルへと倍増するためには、たぶん八OO万ドルの追加資本支出を要するだろう。
一方、B杜では、一八OO万ドルの追加が必要、という計算になる。
B杜は四OO万ドルの利哉のために、三六OO万ドルの資産を有し、株主資本利益率は二%である。
売値は三六OO万ドル程度になろう。
同社のオーナーは、一ドルの投資によって、一ドルの市場価値をつくり出したことになる。
一方S杜は、一六OO万ドルで四OO万ドルを稼ぎ出す。
前述の計算では、市場価格は五OOO万ドルになる。
S社のほうのオーナーは八OO万ドルの追加投資によって、二五OO万ドルの資産を得た、と言える。
一ドルの投資で三ドル超を手にしたことになる。
売上げに比べて固定資産の比率が大きい企業は、概して利益率が低い。
この種の企業は、操業を続けるためだけに、相当の追加投資を必要とする体質である。
高率のインフレ期には、これら資本集約的な企業は、追加投資に必要な資金を捻出するために汲々とすることになる。
自社株の買い入れもままならないし、実質的な増配をすることもない。
本質的に多額の資本支出を必要とする企業は、金の使い手であって、稼ぎ手ではない。
インフレ期には、ごく少数の企業が莫大な利益を上げる。
経済的かのれん。
という無形資産を活用すると同時に、追加投資も少額ですむからだ。
自由裁量で使える利益が増えるにつれて、企業は増配あるいは自社株買いを実行することができる。
Pは「経済的のれんはインフレの問中、収入を約束してくれる天の贈り物」とき。
Pは、不良企業に痛めつけられた経験を持つので、収益力の弱い企業に対する投資については、非常に憶病である。
彼に経済的のれんの価値を教えたのはS社の保有であり、「Sで学んだ教訓のおかげで、われわれは一部の普通株で莫大な利益を上げた」と語っている。
Pは、ポートフォリオ・マネジメントを採用していない。
少なくとも従来の意味ではそうだ。
現今のファンドマネジャーは、株価平均法、業種問分散、主要インデックスとの運用成果比較などは熟知している。
ほとんどのマネジャーは、保有する個々の銘柄の金額のバランスをとるように工夫する。
また、諸々の産業、つまり素材、資本財、消費財、景気循環型、金融、エネルギー、公益事業、運輸型、などの産業への投資資金の配分などを承知している。
株式投資の運用成果と、S&P五OO種やダウ平均などのそれとの比較に関心のないマネジャーはほとんどいない。
Pも、これらの統計についてはすべて知っているが、その検討に無駄なエネルギーを使うことはしない。
一九九一年の年次報告書で、Pは、ポートフォリオ・マネジメントに対する取り組み方を説明している。
もし彼の選択範囲がオマハ地域の企業に限られていたとしたら、第一に、個々の業種についての長期的展望を確かめる。
次に、経営者の資質を判定し、最後に、限られた数の優良企業の株を妥当な価格で買おうと試みる。
地域のなかにある、すべての業種の株を買うことは考えない。
今、選択の範囲が大きく広がったからといって、やり方を変える必要があるだろうか?一九七一年、年金ファンドのマネジャーたちは、債券を売り、株式を買っていた。
P自身にとっても魅力ある企業が多数あったが、彼が妥当と考える価格で買えるものはほとんどなかった。
同年のPの株式ポートフォリオの資産は、二七O万ドルであった。
それからコ一年後、一九七四年の下げ相場のときには、同じ年金ファンドのマネジャーは、株価が非常な低水準にあったのに、ファンドのわずか二一%の金額しか株式に投資していなかった。
一方、Pは、株式の比率を増やし、その市場価格は一九七五年には三九OO万ドル、一九七八年には未実現利益八七OO万ドルを含む二億二OOO万ドルになっていた。
この三年の聞に、ダウ平均は八五二ポイントから八O五ポイントに下がったが、Pの利益は、未実現のものを加、えて、一億一二OO万ドルに上がっていた。
W株は、Pが初めて大量に買った株式であった。
一九七三年に一000万ドルを投資、一九七七年までにはその三倍になっていた。
これが、その後数多く買った出版社の株の最初のものであった。
Pは、広告、放送各社の株にも投資した。
一九七0年代末にはC社、ABC杜の株式を保有していたし、一九八六年の、前者による後者の買収にも参加している。
一九七八年、Pは現在に至るまでの最大の投資を行なった。
SAFECO杜の株式に二三八O万ドルを投資したのである。
彼によれば、同社は、米国の損保のなかでも、自ら経営する会社を含めて最優良会社だという。
SAFECOとGEICO(連邦職員保険会社)を合わせると、Pの損保株への投資は、株式ポートフォリオの二九%を占めた。
広告、放送、出版で三七%。
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